平成24年度事業計画書
自平成24年4月1日 至平成25年3月31日
I.一般事項
昨年を振り返りますと、3月11日の東日本大地震と大津波の被害はあまりにも甚大で、また、大型台風や豪雨が各地に大水害をもたらし、日本列島が自然災害の猛威に曝されました。また震災によって引き起こされた、福島原発の事故は広範に放射能を飛散、流出させ、周辺住民の避難や農畜産物汚染、海洋汚染を引き起こし、わが国史上例を見ない大惨事となりました。
この結果、外国人観光客、ビジネスマンは来日を取消し、日本中のホテル、旅館は閑散とし、イベント、集会、宴会の自粛ムードの蔓延により、料飲業界は開店休業状態が続き、従業員の一時帰休、解雇等相次ぎました。この事故によりわが国の経済並びに環境が被ったダメージは膨大で、この回復に国民は計り知れない負担を払わされる結果を招きました。
この間、内政の停滞を招いた菅直人内閣は、野田佳彦内閣へと政権を移譲しましたが、震災復興と記録的円高不況の狭間に置かれ、更にTPP加盟の問題等が加わり、内憂外患を地で行く苦しい政権運営を行っております。
一方、海外でもわが国同様に自然が猛威を振るい、ニュージーランドやトルコの地震では多数の日本人が命を失い、また、タイ、カンボジア、ベトナム等が大洪水に見舞われ、円高回避で進出した日系企業の生産ラインが水没し、多大な損失を被りました。
また、米国債のデフォルト危機やギリシャ国債の破綻に端を発したユーロ圏の混迷は、イタリア、スペイン、ポルトガル国債を下落させ、更に広がりを見せようとしています。
一方チュニジアのジャスミン革命に端を発した、民主化騒動はたちまちアラブ世界に波及し、チュニジア、エジプト、リビアの長期独裁政権を倒し、一党独裁で発展が続く中国に警戒感を抱かせました。
その中国は、成長率こそ鈍化し始めたものの、相変わらず10%近い経済成長を維持して全世界に影響力を増してきましたが、高速鉄道や上海地下鉄の事故が相次ぎ、欧州への輸出の低迷と相まって、これまでとって来た強引な政策の転換を迫られています。
そのような中、日中協は本年の8月に発足30周年の記念すべき節目を迎えます。
この節目を新しい日中協への転換点と捉え、公益社団法人への移行を行います。
震災復興と少子高齢化による消費の低迷、円高不況等、業界を取り巻く環境が厳しい中、「新公益法人法に基づく公益法人への移行」が日中協運営の次のハードルとして控え、この実現こそが本年の日中協最大の事業となります。
また、本年第9回目を迎える2年に一度の「青年調理士のための全日本中国料理コンクール」は、本年も5月16日の総会に合わせてこれを開催いたします。
中国料理従事者の調理技能等の向上並びに後継者の育成は、弊会設立の最大の目的であり、「青年調理士コンクール」は震災で活力を失った業界再建に最適の事業と言えます。
更に、日中協が立ち上げましたインターネット検索サイト(美食ナビ「食べチャイナ」)も、一流店への登竜門と確信致しますので奮って登録願いたいと思います。
昨今は、日中協の設立当初に比べ社会情勢は大きく変わり、交通や意思伝達の手段も激変いたしております。しかし、私たちの従事する中国料理の世界では、 "美味しい料理と居心地の良さを提供"することが、不変的、絶対的価値と言うことができます。調理並びにサービス技能を向上させ、併せて調理場とホールが連携して初めてこれを可能にすることができます。
料理飲食業も人気商売でありますから、流行やトレンドを研究することは必要ですが、研鑽した技術を信じて業務に精励頂くことが何より大切な時代であることも各自認識頂きたいものです。
Ⅱ.一般事業
1. 中国料理文化の振興を図るための事業
- ① 中国料理専科「圓卓」の発行
- 業界唯一の広報誌 中国料理専科「圓卓」の制作にあたり、中国料理従事者が求める誌面構成("繁盛店"や"人気メニュー""独立のすすめ"等)を目指して編集を行い、個々のシリーズについても随時内容の見直しを行い、内容の充実を図る。また、中国料理に興味を持つ一般消費者、セミプロのコーナーの増設も検討する。
- ②円卓別冊日中協三十年のあゆみの発行
- 日中協三十年のあゆみを円卓の別冊として記念式典挙行時に発行する。
- ③ホームページの内容充実並びに有効活用
- 弊会の公式ホームページを充実させ、国民に協会の活動内容のディスクロージャーを行う。また、会員在籍店舗、賛助会員企業を検索するために立ち上げた「食べチャイナ」への登録件数を増加させ、消費者が利用し易い体制を構築し、これを一般消費者に公開し、消費者の利便性の向上に繋げ、ホームページを通じて国民の健全な食生活の実現を目指す。
- ④中国料理文化検定試験の実施
- 一般消費者を対象にした中国料理文化検定試験を実施する。
- ⑤食育関係事業実施
- 本部、支部を問わず、国並びに自治体の行う食育事業に協力するとともに、調理技術技能センターが各地で実施する食育推進講座の開催に全面的に協力する。また、学校、保育園等に積極的に食育事業をPRするとともに、一般消費者を対象とした会独自或いは企業とのタイアップによる料理講習会を行い、国民の食育の増進に貢献する。
2. 調査・研究事業
- ①通算26回目となる「中国料理の調査・研究」は4人の調査研究員を10月に、2週間に亘り浙江省杭州を候補地として派遣する。
- ②「専門調理師」「調理技能士」の社会で果たす役割拡大の可能性を関係団体に諮るとともに、国の実施する"食育事業"或いは企業の食の安全確保に関する自主管理基準"HACCP"に、"専門調理師"が「食の専門家」として最大限の貢献ができる方策について調査・研究を行う。
- ③中国料理従事者の職業の安定を図るため、定年退職者及び失業者の再就業先の確保並びに後継者の確保及び人手不足解消手段の可能性についての調査、研究を行う。
3. 中国料理従事者の調理技能等を向上させ、職業の安定をはかり、 就労の支援を行うためのコンクール、講習会等事業
(コンクール、賞味会、通信講座、講習会、各種資格取得推進等)
- ① 中国料理コンクール等
- 第9回「青年調理士のための中国料理コンクール」を主催するとともに地区本部、支部主催の料理コンクールを支援し、また、フランス食品振興会や全国養鱒振興協会等の生産者団体、企業等の求めに応じ料理コンクール等主催又は後援を行い、業界従事者の調理等技能の向上、食材の有効活用及び消費拡大に資する。
- ②賞 味 会
- 賞味会を会員総会に合わせて開催し、中国料理従事者の調理、調味技能向上並びに国内食材の有効利用及び消費拡大につなげる。
- ③「食養薬膳調理師」の通信教育講座
- 国民の健康増進に役立てるために、食物に関する東洋の伝統的思想である"食効" についての知識及びその"調理法"を身に付けた、「食養薬膳調理師」を育成するための通信教育講座を引き続き実施する。
- ④調理並びにサービス技能、知識向上の為の講習会
- 中国料理伝統の調理並びにサービス技能を後継者に広めるために、弊会本、支部主催の新素材等の講習会を定期的に開催するとともに、メーカー、商社とのタイアップセミナーを全国各地で企画、開催する。
- ⑤各種資格取得推進事業
- イ) 「中国料理飲食服務技能」認定試験
中国料理服務従事者の資質向上のため「飲食服務技能」認定3級の4回目、2級の3回目の試験を弊会が主催して実施すると共に、1級試験の本年度中の実現を目指して準備を行う。
- ロ) 調理技術技能評価試験
調理技術技能評価試験制度の重要性を業界内に浸透させて「専門調理師」の増員を図り、食育事業等を通じて国民の豊かで安心な食生活実現をめざし、「専門調理師」の有効活用に繋げる。本年度の試験会場を札幌、仙台、東京、静岡、大阪、福岡の6会場とし、受験者数は200人の大台確保を目指す。
- ハ) 調理師試験
中国料理従事者の食品衛生、公衆衛生等の知識の向上を図り、国民に衛生的で安全な食事を提供できるよう、「調理師免許」取得率の更なる向上を目指す。弊会が加盟する"調理技術技能センター"が東京都、埼玉県、茨城県、青森県、富山県等から受託する調理師試験を全面的に支援する。
4. 国際交流事業
- ① 研修視察旅行
- 12年3月は浙江省杭州を中心に3泊4日の一都市集中型の研修視察旅行を実施する。12年10月には山東省済南、曲阜、北京へ4泊5日の研修視察を、11月にはシンガポールで開催される世界中国烹?連合会第七届世界烹?比賽への応援を兼ねて5泊6日の研修視察旅行を実施する。シンガポールでは世烹連理事会並びにシンポジュウムに出席して、中国烹?協会を始めとする各国及び地域の烹?団体との交流を行い、わが国中国料理のレベルアップに繋げ、中国料理の立場から国際相互理解の向上、促進を図る。また、平成13年3月には広州又は香港へ3泊4日の研修視察旅行を企画する。
- ②海外関係者の招聘
- 8月下旬から9月上旬にかけて、研修生との交換ミッションを浙江省杭州から招き各地で講習会、交流会を行う。また、12年6月に中国薬膳料理関係者を招聘して、日本の薬膳事情を視察させ理解の向上を図るとともに弊会の薬膳通信講座の推進に役立てる。13年1月の総会に合わせて開催予定の「日中協成立30周年記念式典」に海外団体の関係者を招待し交流を行う。
5.表彰関係事業
中国料理従事者の福祉並びに社会的地位向上を目的に、当会規定に基づく本、支部貢献者への表彰を行うとともに、公的表彰への推薦を積極的に行う。
6.食材並びに可食資源の有効活用等事業
生産者や企業、団体の求めに応じての様々な食材の用途開発や市場開発、可食資源の有効活用事業に料理コンクール等のかたちで協力を行い、国や自治体の推進する食糧の自給率の向上や地産地消事業の推進に資する。
7.保護観察青少年の社会復帰支援並びに業界入職者勧誘活動
社会復帰を目差す保護観察青少年の中国料理業界への入職支援活動を継続実施するとともに、今後更なる激化が予想される中国料理業界後継者並びに入職者不足解消のための手段を一刻も早く講ずる。
Ⅲ.その他事業
1. 会員福祉事業
業界従事者の福祉向上活動の一環として日中協見舞金制度を継続実施する。また、失職者、定年退職者のための職場確保並びに創出等を行い支援する。
2.組織の拡充
- ①公益社団法人移行申請
- 当会の公益社団法人移行申請を本年度中に完了させ、平成25年4月1日より公益法人へ移行できるよう万難を排して準備を行う。特に、地区本部との連結決算の早期実現を目指し方策を講じる。万が一達成できなかった場合の対策についても検討を行う。
- ②会員の増員方針
- ⅰ) 弊会組織にとって最も影響力の大きい東京地区本部をはじめとする首都圏各支部組織の活性化を図る。大型店舗、チェーン店での会員回復の対策、地区本部、支部は連携して会員の店舗間及び支部間の移動の追跡を行い、退会者の減少に努め、併せて独立出店者の会員復帰を図る。
- ⅱ) 理事、幹事は率先して自店舗未入会者の入会を促進し、公益社団法人移行時会員の6,000人大台回復を実現させる。
- ⅲ) 中国料理「飲食服務技能認定試験」及び準備講習会の開催、「食養薬膳調理師」通信講座の実施を通じて、業界従事者の入会促進を図る。
- ⅳ) 中国料理の普及啓蒙を図る一環として、議決権を有しない圓卓購読会員の入会促進を図る
- ③賛助会員交流会
- 昨年に引き続き賛助会員の交流会を開催し、賛助会員間のより密接な結びつきを図り、併せて、賛助会員の増員及び当会並びに業界の更なる発展に資する。
3. JACCビル(キッチンスタジオ)の有効活用
- ①調理技能、知識向上のための講習会を定期的に企画、開催すると共に、各種セミナー、資格認定試験などにも会場として利用する。
- ②賛助会員各社とのタイアップにより、一般消費者向け料理講習会を開催する。
Ⅲ.収益事業
1. 不動産賃貸事業
JACCビル4、5、6階の賃貸を収益事業として行う。
Ⅳ.その他
本会の目的を達成する為の事業を実施する。
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