平成22年度事業計画書
自平成22年4月1日 至平成23年3月31日
I.一般事項
昨年を振り返ると、日米ともに新政権が誕生し、アメリカでは史上初のアフリカ系のオバマ大統領が、そして日本では民主党の鳩山首相が、百年に一度とも言われる世界同時不況の中で、不況、雇用の回復対策を矢継ぎ早に実施し国の舵取りを始めた。
各国もこれに呼応して大型の不況対策を実施、新興国では早速効果が出たが、日米欧主要先進国経済は停滞し、資本主義社会の経済疲弊度の高さを実感させる年となった。
この不況の最大の原因は、世界中が中国に安い労働力を求めて資本と技術を移転したため、世界中が中国の安い労働力と競争せざるを得なくなったこと。加えて余りにも自由貿易が広がりすぎたため、世界中に物があふれる深刻な結果を招いたことに他ならない。
中国は共産党の一党独裁の下、鉄道や道路などのインフラに巨額の国費を投じて内需を喚起、不動産価格の上昇を演出するなどして、二桁に近い経済成長率を維持、世界に社会主義市場経済の有為性を示し、10月1日には建国60周年を迎え、盛大に祝賀行事や軍事パレードを行い経済力と軍事力を内外に誇示してみせた。
このような中、わが中国料理業界はかつて経験をしたことのない不況に遭遇、長期にわたり全国規模で消費単価、来客数の減少に苦しめ続けられた。
このような状況を招いた原因は、世界同時不況、中国食材の安全度、新型インフルエンザなど複数が挙げられるが、私たちが中国料理に従事し、勤務先から生活の糧を得ている限り、勤務先をこの難局から救出しなくてはならない。
これまでも、中国料理業界幾多の不況に遭遇してきたが、その都度業界従事者間の情報交換を密にし、知恵を出し合い、不況を乗り切った歴史を持っている。また業界はこれまで、普通の食材に手間をかけ “美味しい料理”に仕上げ、来店したお客様に全力でサービスを提供することで、信頼を勝ち得て業界を繁栄させてきた。ところが、昨今は高い料理を売ることに専念し、お客様の視点で値段も含めた料理や店を見ることを忘れてきた。
長期不況の今こそ、原点に戻って仕事の見直しを行いたいものである。
一方、日中協は昨年、会員のデータベース化のための名簿の整理を行い、運営の原資たる会員を大幅に減少させてしまった。会員減少の最大の原因は、不況を理由にした組織活動の停滞であり、本支部共に役員が新規会員勧誘を躊躇していることにあると思われる。一刻も早く理事、幹事の皆様には率先垂範で会員の入会促進に努めて頂きたいものである。
公益社団移行申請は、政権交代もあり業界団体の動向を見ながら準備を行っているが、本支部の連結決算の準備が整い次第、認定申請書類の作成に取り掛かることになる。
新年度は2年に1度の「青年調理士コンクール」の年に当たる。青年調理士の持つ限りないエネルギーを業界再生のエンジンに注入し、この不況からの脱出を図るべく、関係者一堂が一致団結してコンクールを成功に導いて頂くことを念願する。
II.事業
1. 調査・研究・建議
- 通算24回目となる「中国料理の調査・研究」は4人の研修生を10月に、2週間に亘り広東省広州、順徳を候補地として派遣する。
- 「専門調理師」「調理技能士」の社会での役割拡大の可能性を関係団体に諮るとともに、国の実施する“食育事業”或いは企業の食の安全確保に関する自主管理基準“HACCP”に、“専門調理師”が「食の専門家」として、重要な役割を担って参画できるよう関係方面と調整をはかる。
- 中国烹飪協会、世界中国烹飪連合会のほかに、更なる友好的関係構築のできる交流先の調査を行う。
- 国民の食の安全と安心を守るための「食養薬膳調理師」の通信教育講座を開始するにあたり、これをより広く、多数の調理師に周知する方法の調査を行う。
- 中国料理業界を一刻も早く不況から脱却させるための調査、研究を行う。
- これまで業界に従事してきた者の、就業先の確保のための調査、研究を行う。
- 業界後継者の確保並びに人手不足解消手段の可能性について調査を行う。
- 当会の公益社団法人化に向けて、認定基準に合致させるための調査、研究を行う。
2. 組織の拡充
- 政府が平成20年12月1日から5年間の猶予期間を設けて行う、公益法人の「公益認定申請」に向けて、当会が公益社団法人として存続するための組織作りを継続実施する。とりわけ、地区本部、支部会計の本部会計との連結化の早期実現を目指し、新公益法人会計基準に合致するよう徹底を図る。
- A 全国の組織にとって最も影響力の大きい東京地区本部をはじめとする首都圏支部組織の活性化を図り、組織拡充に努める。また、理事、幹事は率先して自店舗の未入会員の入会を促進して、6,000人の大台回復を目指す。大型店舗、チェーン店での会員回復の方策を講じ、地区本部、支部が連携して会員の店舗間及び支部間の移動の追跡を行い、退会者の減少に努め、併せて独立出店者の会員復帰を図る。
- 中国料理「飲食服務技能認定試験」及び準備講習会の開催、「食養薬膳調理師」通信講座の開始を契機として、業界従事者の全国的入会促進を図る。
- 賛助会員交流会
昨年に引き続き賛助会員の交流会を開催し、賛助会員間のより密接な結びつきを図ることにより、弊会並びに業界の更なる発展に繋げる。
- 圓卓購読会員
中国料理の普及啓蒙を図る一環として、議決権を有しない圓卓購読会員の入会促進を図る。
3. 広報・出版
- 中国料理専科「圓卓」の発行
業界唯一の広報誌 中国料理専科「圓卓」の制作にあたり、中国料理従事者が求める誌面構成(“繁盛店”や“人気メニュー”等)を目指して編集を行い、個々のシリーズついても適宜内容を見直し、注目度の高い雑誌を目指す。また、中国料理に興味を持つ一般消費者、セミプロのコーナー増設も検討する。
- ホームページの内容の充実並びに有効活用
本物の中国料理を国民にPRするために、ホームページの内容の充実を図る。特に、会員在籍店舗、賛助会員企業間のネットワークを作り、併せて消費者が利用し易いシステム作りを行い、これを一般消費者に公開し、消費者の利便性の向上に繋げ併せて、ホームページを通じて国民の豊かで安全、安心な食生活の実現を目指す。
4. 調理並びにサービス技能・知識向上のための事業(コンクール、賞味会、講習会、セミナー、試験、資格取得等)
- 第8回青年調理士のための全日本中国料理コンクール
中国料理調理師の調理技能の向上と、青年調理士並びに後継者の育成のために、隔年開催の「第8回青年調理士コンクール」を、5月の総会に合わせ東京で開催する。
- 賞 味 会
調理、調味技能の向上を図るための賞味会を、会員総会に合わせ年2回開催する。
- 調理技術技能評価試験
「専門調理師」資格の重要性を業界内に再浸透させ、食育関係事業での資格者の有効活用に繋げる。本年度の試験会場を 札幌、東京、名古屋、大阪、高松、福岡の6会場とし、受験者数は200人の大台確保を目指す。
- 中国料理「飲食服務技能」認定試験
中国料理服務従事者の資質向上のため「飲食服務技能」認定3級の4回目、2級の3回目の試験を行うと共に、1級の試験を本年度中に実施できるよう準備を進める。
- 「食養薬膳調理師」の通信教育講座
国民の健康増進に役立てるために、食物に関する東洋の伝統的思想である“食効” についての知識及びその“調理法”を身に付けた、「食養薬膳調理師」を養成するための通信教育講座を開講する。
- ヨーロッパワイン、虹鱒等との中国料理コンクール
フランス食品振興会や全国養鱒振興協会とのタイアップで、中国料理コンクール並びにセミナーを開催する。
- その他料理コンクール関係
地区本部、支部主催の料理コンクールを積極支援すると共に関係団体、企業などの求めに応じ料理コンクールの主催、後援を行い業界の調理技術の向上に資する。
- 調理師試験関係
中国料理従事者が国民に安全で安心な食事を提供できるよう、食品衛生、公衆衛生等の知識の向上を図り、調理師免許取得率の更なる向上を目指す。“調理技術技能センター”が東京都、茨城県、青森県、富山県から受託し、8月21日(土)に実施する調理師試験を全面的に支援する。
- 調理並びにサービス技能、知識向上の為の講習会
中国料理伝統の調理並びにサービス技能を後継者に広めるために、当会主催の新、珍素材の講習会を定期的に開催するとともに、中国酒、中国茶のメーカー、商社とのタイップセミナーを、東京を手始めに全国各地で企画開催する。
- 食育事業関係
本部、支部を問わず、国並びに自治体の行う食育事業に協力するとともに、調理技術技能センターが各地で実施する食育推進講座の開催に全面的に協力する。また、学校、保育園等に積極的に食育事業をPRするとともに、一般消費者を対象とした会独自或いは企業とのタイアップによる料理講習会を行い、国民の食育の増進に貢献する。
5.表彰関係
当会規定に基づく本、支部貢献者への表彰を行うとともに、公的表彰への推薦も積極的に行い、業界関係者の福祉並びに社会的評価の向上を図る。
6.福祉関係
業界従事者の福祉向上活動の一環として日中協見舞金制度を継続実施するとともに、失職者のために職場の確保並びに創出等を行い支援する。
7.研修視察旅行
9月中旬には山西省太原に山西麺料理の勉強に行く途中、上海万博開催中の上海に立ち寄り中国の秋の味覚を賞味する旅行を、11年3月は上海経由で福建省福州、武夷山方面か浙江省温州、紹興、杭州方面に4泊5日で計画する。
8.国際交流関係
8月下旬から9月の上旬にかけて、研修生との交換ミッションを広東省から招いて各地で講習会、交流会を行う。また、6月下旬に世界中国烹飪連合会が東京及び北海道で開催する理事会並びにシンポジュウムを支援するとともに、必要に応じて中国烹飪協会を始めとする各国及び地域の烹飪団体との交流を行い、わが国中国料理のレベルアップに繋げると共に、中国料理の立場から国際相互理解の向上、促進を図る。
9. JACCビル(キッチンスタジオ)の有効活用
- 調理技能、知識向上のための講習会を定期的に企画、開催すると共に、各種セミナー、資格認定試験などにも会場として利用する。
- 賛助会員各社とのタイアップにより、一般消費者向け料理講習会を開催する。
10. 食材並びに可食資源の有効活用事業
生産者や企業、団体の求めに応じての様々な食材の用途開発や市場開発、可食資
源の有効活用事業に協力を行い、国や自治体の推進する食糧の自給率の向上や地産地消事業の推進に資する。
11. 青少年の社会復帰支援並びに業界入職者勧誘活動
社会復帰を目差す青少年への中国料理業界への入職支援活動を継続実施すると共に、今後更なる激化が予想される業界の後継者並びに入職者不足解消のための手段を一刻も早く講ずる。
12. その他
本会の目的を達成する為の事業を実施する。
|