平成25年度事業計画書
自平成25年4月1日 至平成26年3月31日
I.一般事項
年が改まり昨年度を振り返ると、東日本大震災とりわけ福島原発事故の復興が遅れる中、ヨーロッパ金融危機の影響から円高が進行し、輸出産業は膨大な損失を蒙り、日本経済は極めて厳しい状況に陥った。
そんな中、五月には世界一の東京スカイツリーが開業、その後、ロンドンで夏季オリンピック開催、山中伸弥教授のノーベル賞受賞など明るいニュースも世界中を駆け巡った。
また、アメリカのオバマ大統領と台湾の馬英九総統は再選されたものの、ロシアでプーチン大統領が復帰、フランスでオランド新大統領誕生、中国では胡錦濤国家主席と習近平氏が交代、日本では自民党が大勝して安倍政権が誕生、韓国では女性初の朴槿恵大統領の誕生と、世界中で大幅な指導者の交代が行われた。
そのような中、石原前東京都知事が尖閣諸島購入構想を発表。この発言に触発され、韓国の李明博大統領は、歴史問題での日本に対する積年の不信感を口実に、大統領として初めて竹島への上陸を敢行。次いで、わが国の野田政権は、「尖閣諸島の国による平穏かつ安定的維持管理のため」と国有化。これに反発した中国政府は、中国全土での同時、多発的な反日デモを容認し、連日にわたり中国公船の接続水域への侵入、領海侵犯等の威嚇行為を行うとともに、日本製品の徹底的排除が行われた。
このため、日中国交回復以来四十年に亘り培ってきた、人的、文化的、経済的絆は中断し、国及び地方自治体並びに各種団体の記念行事はことごとく中止され、中国の経済発展にも影響が出始める結果を招いた。
一方日中協では、5月には総会に併せ第9回「青年調理士のための全日本中国料理コンクール」を盛会裏に開催することができ、11月中旬のシンガポールで開催された第7回「世界中国烹飪比賽」には日中協の2チームが参加し、不慣れな環境の中、金メダルの栄誉に輝いた。
また、2年間に亘り実施してきた「営養薬膳」通信講座の、第1期生63名中60名が9月を以って講座を終了し、50名がその後の中国国家資格の「営養薬膳師試験」へと駒を進め、実に優秀な結果を残すことが出来た。
また昨年は、日中協は発足三十周年の記念すべき年に当たり、この節目に公益社団法人への移行申請を行い、新年度より新公益法人としてスタートを切る体制を整えた。
このように、日中協会員は実に厳しい環境の中、目標を見失うことなく活動を行い、常に前向きに新しいステージでの活動に取り組んできている。
公益社団法人への移行により、日中協が設立当初の目的及び事業を大幅に変更することはないが、90年代のIT革命を経て、業界従事者の日中協=業界団体に対する見方は確実に変化を遂げており、この齟齬の修正が日中協の今後の課題と言える。
ただ、時代背景が変わり、価値観が変わってはいるものの、調理の世界では手作りに勝る調理器具やロボットの時代は未だ到来せず、これまで培ってきた調理技術と最高のサービス空間を提供する術を、人から人に伝えることに徹すべきではないか。
日中協の考え方に添ってお客様をもてなす時代はこれからも暫く続くものと思われ、日中協をより公益性の高い法人として次世代に残すことに、異論を唱える会員は皆無に等しい。
本年から始まる公益社団法人の活動は、簡潔に申すなら、会員が日中協を通じて力を蓄え、これを一人でも多くの国民に還元して頂くことである。
その一つが、中国料理文化の振興を図り公衆衛生の向上に寄与することであり、その2は中国料理従事者の技能を向上させ、職業の安定を図り、国民の健康増進に寄与することにある。
会員諸氏には、これまで日中協で培ったノウハウに自信を持ち、新法人となった後も、大きな目標を掲げ、その目標に向かって邁進して頂くことに尽きると思われます。
Ⅱ.一般事業
1. 中国料理文化の振興を図るための事業
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(1)中国料理の調理等の調査研究及び中国料理専門誌「圓卓」並びに中国料理専門書籍の発行、ホームページの運営を行い国民に中国料理の普及啓蒙を行う
- ①中国料理の伝統的調理技能及び文化を継承し、発展させることを目的に、我が国唯一の中国料理専門の定期刊行物「圓卓」の制作、発行を行う。
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「圓卓」の制作にあたり、中国料理従事者が求める誌面構成を目指して編集を行い、個々のシリーズについても随時内容の見直しを行い、充実を図る。また、中国料理に興味を持つ一般消費者、セミプロ等への配布拡大を図る。
- ②「圓卓」及びホームページを使って、本会の行う公益事業の告知、成果の発表を行う。
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「圓卓」及び本会の公式ホームページ上で、中国料理コンクールや調査研究員の海外派遣その他事業の案内及び募集等の実施、協会で実施した各種事業の成果の公表等を行う。
- ③中国料理専門書籍の発刊
- 必要に応じて中国料理専門書籍の発刊を検討する。
(2)食育事業等の実施
- ①内閣府主催の食育推進全国大会に参加し、参加者に中国料理の調理法及び食養薬膳料理についての普及啓蒙を行う。
- ②(社)調理技術技能センターが各地で開催する食育推進講座に協力し、専門調理師の食育事業への貢献をサポートする。
- ③支部及び地区本部事業として学校、保育園、養護、介護施設への料理慰問を行う。また、一般消費者を対象とした料理講習会等を開催する。
- ④中国料理従事者の調理技能及び味覚向上のために開催する「賞味会」開催の際に、全国の農漁業生産者から様々な食材の提供を受けて、食材の有効活用や消費拡大に繋げる活動を行う。
(3)中国料理文化(グルメ)検定試験の実施
- 一般消費者を対象にした中国料理文化(グルメ)検定試験実施に向け、収支相償の範囲内で定める検定料も含め、基準やテキスト作成等の準備を行い、平成25年度中に初級、中級、上級のうち初級の実施を目指す。
(4)国際交流事業の実施
- ①調査・研究員の海外派遣及び海外調理関係者の招聘
- 昨年9月の政府の「尖閣諸島の国有化」をきっかけとした日中両国間の軋轢により、延期を余儀なくされた通算26回目となる「中国料理の調査・研究員」4人の杭州派遣について、実現の可能性を見極める。第27回目となる本年は、北京、上海、広州等の大都市を候補地に絞り、中国烹飪協会との連絡を密に取り、10月の実施をめざし早急に候補地の選定を行う。海外関係者の招聘は、本年8〜9月中の実施を目指す。
- ②研修視察旅行の実施
- 研修視察先として、日中両国間の国交修復の度合いを見極めながら、年2回実施する研修視察旅行先の選定を早めに行い、調査、研究員の海外派遣、関係者の招聘先の目途をつける。候補地としては中国の潮州、景徳鎮、海南島等、澳門、台湾、東南アジア等も含め検討する。
- ③世界中国烹飪聯合會の各種催事に参加
- 世界中国烹飪聯合會副会長国として第5回総会、理・監事会へ出席し、同会の今後五年間の円滑な運営の方向性を決めるとともに、日中も含めた加盟国間における民間交流の成果を上げる。
(5)災害支援事業- 国内での災害発生時に、被災者の健康維持、希望の付与による一刻も早い復興を支援するため、迅速に被災地に出向き、中国料理の大量調理法の技術及び健康促進料理の特性を生かした、炊き出し支援等を実施する。 また、海外においても交流団体等の状況を判断し、支援金等の送付を通じた復興支援を実施する。
2. 中国料理従事者の資質を向上させるための事業を実施し、就労支援を行い、国民の公衆衛生の向上に寄与する事業
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(1)中国料理コンクールの実施
- ① フランス食品振興会や養鱒振興協会、エバラ食品工業鞄剴煌Oの生産者団体、企業の要請に応じて、食材の有効活用や国産食材の消費拡大及び業界従事者の調理等技能の向上を目的とした、ワインコンクール、ニジマスコンクール、スープコンクール等の受託料理コンクールを実施する。
- ②地区本部、支部主催の料理コンクールの支援し、成績優秀者には本部会長表彰を授与。事業の成果は、「圓卓」、ホームページ等により公表する。
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(2)賞味会の開催
- 中国料理従事者の味覚を向上させ、中国料理の合理的な調理技術を身に着けた調理人の育成をめざし、随時「賞味会」を開催する。この「賞味会」では、会場で提供される中国料理を試食体験し、参加者の味覚の向上に役立て、ひいては国民の公衆衛生の向上に繋げる。また、生産者団体等より提供を受ける国産食材の有効利用及び消費拡大、食糧の自給率向上につなげることをテーマとする。 また、「賞味会」を、需要が増大している産業給食等のための中国料理調理等従事者の育成にも活用する。
(3)「食養薬膳調理」通信教育及び「 営養薬膳師」試験の実施
- 食べ物に関する東洋の伝統的思想である“食効”についての知識及びその“調理法”を身に付けた「食養薬膳調理」を学ぶための2年制通信教育講座を開講し50名程の受講生確保を目指す。講座修了者を対象に「営養薬膳師」試験を中国・中華中医薬学会営養薬膳専家分会と協力して実施する。
(4)中国料理「飲食服務技能」認定試験の実施
- 中国料理従事者を対象に、「飲食服務技能認定試験」の3級、2級を昨年に引き続き実施する。本年は念願の1級の試験についても実施を予定する。
(5)調理及びサービス技能並びに知識向上のための講習会等の開催
- ① (社)調理技術技能センターからの受託事業として、国家検定の中国料理専門調理師試験の学科免除講習、「調理師熟練者講習会」を本年は実施する。
- ② サービス技能認定試験の学科及び実技試験の準備講習会を開催する。
- ③ 海外烹飪代表団が来日した際の料理講習会を各地で開催する
- ④ 調理及びサービス技能向上のための講習会を必要に応じて開催する。
- ⑤ 各種資格取得推進事業
- ⅰ)調理技術技能評価試験
調理技術技能評価試験制度の重要性を業界内に浸透させ、専門調理師」の増員を図り、食育事業等を通じて国民の豊かで安心な食生活実現をめざし、「専門調理師」の有効活用に繋げる。本年度の試験会場を札幌、東京、名古屋、大阪、福岡、那覇の6会場とし、受験者数は150人の確保を目指す。
- ⅱ)調理師試験
中国料理従事者の食品衛生、公衆衛生等の知識の向上を図り、国民に衛生的で安全な食事を提供できるよう、「調理師免許」取得率の更なる向上を中国料理業界内で図る。弊会が加盟する“調理技術技能センター”が東京都、埼玉県、茨城県、青森県、富山県等から受託する調理師試験を全面的に支援する。
- ⑥ JACCビル(キッチンスタジオ)の有効活用
- ⅰ)調理技能、知識向上のための講習会を定期的に企画、開催すると共に、各種セミナー、資格認定試験などにも会場として利用する。
- ⅱ)賛助会員各社とのタイアップにより、一般消費者向け料理講習会を開催する。
(6)入職促進活動及び保護観察青少年の社会復帰支援等
- ①後継者の入職促進活動
調理師養成施設協会と連携を取り、全国の調理師養成施設の文化祭及び卒業式等で中国料理を専攻した成績優秀者に、各施設長からの申請に基づき会長表彰を授与する。また、同協会主催のコンクールに当会代表を審査委員として派遣及び会長表彰の授与を継続実施する。
- ②保護観察青少年の社会復帰支援
法務省保護局からの依頼を受け、社会復帰をめざす保護観察青少年の中国料理業界への入職支援を継続的に実施する。また、更生保護施設への料理慰問等も併せて行う。
Ⅲ.収益事業
(1)不動産賃貸事業
- JACCビル4、5、6階の賃貸を収益事業として行う。
Ⅳ.その他事業
(1)会員福祉事業
- ⅰ)会員福祉の向上活動の一環として日中協見舞金制度を継続実施する。
- ⅱ)失職者、停年退職者のための職場確保並びに創出等を行い支援する。
(2)会員在籍店舗、賛助会員企業を検索するために立ち上げた「食べチャイナ」への登録件数を増加させ、消費者が利用し易い体制を構築し、これを一般消費者に公開し、消費者の利便性の向上に繋げ、インターネットを利用を通じて国民の健全な食生活の実現を目指す。
(3)組織の拡充
- ① 公益社団法人へのスムーズな移行
平成25年4月1日内閣府の認定を受け公益社団法人への移行を行うが、全国の地区本部、支部において、さまざまな齟齬が生じないよう、会員の一致団結を以って対処する。
- ② 会員の増員方針
- ⅰ)弊会組織にとって最も影響力の大きい東京地区本部をはじめとする首都圏各支部組織の活性化を図る。大型店舗、チェーン店での会員回復の対策、地区本部、支部は連携して会員の店舗間及び支部間の移動の追跡を行い、退会者の減少に努め、併せて独立出店者の会員復帰を図る。
- ⅱ)理事、幹事は率先して自店舗未入会者の入会を促進し、公益社団法人移行時会員の5,000人大台回復を実現させる。
- ⅲ)中国料理「飲食服務技能認定試験」及び準備講習会の開催、「食養薬膳調理師」通信講座の実施を通じて、業界従事者の入会促進を図る。
- ⅳ)中国料理の普及啓蒙を図る一環として、議決権を有しない圓卓購読者の入会促進を図る。
- ③ 賛助会員交流会
- 昨年に引き続き賛助会員の交流会を開催し、賛助会員間のより密接な結びつきを図り、併せて、賛助会員の増員及び当会並びに業界の更なる発展に資する。
(4)表彰関係事業
- 中国料理従事者の福祉並びに社会的地位向上を目的に、当会規定に基づく本、支部貢献者への表彰を行うとともに、公的表彰への推薦を積極的に行う。
Ⅴ.その他
- 本会の目的を達成する為の事業を実施する。
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